がんの最新治療法として、放射線治療とともに注目を集めているのが免疫細胞療法です。
免疫細胞療法は、私たちの体に本来備わっている免疫を利用した治療法で、がんの部位を選ばずに全身に適用できる治療法です。
そこで、免疫細胞療法のメリットと、DCハイブリッド療法とBAK療法についてご紹介します。
目次
がんの最新治療法「免疫細胞療法」とは
私たちの体は、免疫という働きが備わっています。
私たちは、呼吸を通じて口や鼻から常時花粉などの異物や細菌・ウイルスを取り込んでいますが、免疫の働きで異物や細菌と戦っているのです。
その異物の中には、日々生まれるがん細胞も含まれます。
がん細胞は、細胞の伝達ミスで起こると言われており、誰にでも起こる現象です。
でも全ての人ががんにかかるわけではありません。
これには、一人一人の免疫細胞が関係しているのです。
免疫力が高い人はがん細胞と戦う力がある
いわゆる「免疫力が高い」という人は、日頃から病気をしにくいですが、「免疫力が低い・弱い」人は、すぐに病気や熱を出してしまいます。
出産直後の女性や、産まれてくる子どもも、免疫力が低い・弱い状態です。
免疫力が弱い状態では、がん細胞をやっつけることができなくなってしまいます。
免疫力が高い状態では、がん細胞にアタックすることが可能になります。
実は、免疫とがんは密接に関わっているのです。
副作用の少ない免疫細胞療法
私たちの体に備わっている免疫を利用する免疫細胞療法は、私たちの体から免疫細胞を一旦体外に取り出して培養し活性化させ、体内に戻して働かせる治療法です。
自分自身の免疫細胞をパワーアップさせて利用するため、副作用も少ないというメリットがあります。
また免疫細胞療法が有効だった場合は、体内で長期的な効果が持続するというメリットもあります。
私たちの体に備わる免疫細胞の数が多数あるように、免疫細胞療法もたくさんの種類がありますが、BAK療法とDCハイブリッド療法についてご紹介していきます。
BAK療法
一般的に免疫細胞療法とは、「BAK療法」のことを言います。
BAK療法のBAKはBRM Activated Killer(生物製剤活性化キラー)の略で、免疫細胞療法の中でも、特にリンパ球を用いたがん免疫細胞療法になります。
BAK療法では、γδ(ガンマデルタ)T細胞やNK(ナチュラルキラー)細胞を主に使用して治療を進めます。
BAK療法の治療の流れ
- 患者さんから採血する(20ml)
- 2週間かけて免疫細胞を約100億個まで増殖する
がん細胞に対して攻撃をするリンパ球、リンパ球にがん細胞の特徴を伝達する樹状細胞を採血から取り出し、体の外で機能を高め活性化させて数を大きく増やします。 - 点滴などを利用して患者さんの体内に戻す
患者さんから採血した20ml中に含まれるリンパ球の数はおよそ3,000個を、2週間かけて培養するとその数は100億個まで増えるのです。
BAK療法は、採血と点滴のみの治療になるので、入院する必要はありません。
BAK療法は他の治療法と併用可能な治療法です。
DCハイブリッド療法
DCハイブリッド療法は、「自然免疫応答」と「特異的獲得免疫応答」という2つの免疫システムを使った新しい免疫細胞療法です。
DCハイブリッド療法は、7種類の免疫細胞を増やす免疫細胞療法です。
DCハイブリッド療法に使われる細胞
- γδT(ガンマデルタティー)細胞
- NK細胞
- NKT細胞
- キラーT細胞
- ヘルパーT細胞
- ナイーブT細胞
- 樹状細胞(樹状細胞ワクチン療法でワクチン化されているもの)
計7種の免疫細胞が強化されて、それぞれ作用し合うと、より効果的にがん細胞に攻撃を仕掛けていくようになります。
なかでも重要な役割を果たすのが、以下の2つの細胞です。
ナイーブT細胞
ナイーブT細胞は、キラーT細胞・ヘルパーT細胞などの「T細胞」に分化する前段階の細胞です。
ナイーブT細胞は若い細胞なので寿命が長く、がん細胞に対する攻撃力も高いという特徴があります。
ワクチン化された樹状細胞
ナイーブT細胞を教育し、攻撃すべきがんの特徴を伝達して、キラーT細胞を成熟し活性化させる力を持っています。
BAK療法とDCハイブリッド療法を併用するメリット
免疫療法であるBAK療法とDCハイブリッド療法を併用することによって様々な効果が発揮されます。
BAK療法のγδ(ガンマデルタ)T細胞やNK(ナチュラルキラー)細胞に加えて、DCハイブリッド療法の樹状細胞、キラーT細胞、ナイーブT細胞が組み合わさると、がん細胞に対して攻撃するためのパワフルな細胞が体内に戻されるので、より効率よく全身に広がったがん細胞と戦うことができるようになるのです。
まとめ
免疫細胞療法とは、患者さんの血液中から取り出した免疫細胞を活性化・増殖させて再び体内に戻し、免疫力を高めてがん細胞と戦うという治療法です。
手術後に残った画像診断では写らないがん細胞や、血液に乗って全身に運ばれているがん細胞に効果を発します。
BAK療法のみでがん治療するということはなく、手術や放射線治療と並行して実施されています。