最先端医療

期待の最新がん治療・陽子線がん治療の効果と今後の課題は?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

高齢化社会が進む中、放射線治療の需要は急増中です。
そんな社会の求めに応じてか、近年、放射線治療に関する研究も飛躍的に進んでいます。

今回取り上げるのは、最新のがん治療の一つ、陽子線がん治療です。
陽子線がん治療の基本を押さえながら、陽子線がん治療に向いているがんや今後の課題についてお話します。

病院

 

陽子線がん治療は放射線の一種です

陽子線がん治療に使われる「陽子線」は放射線の一種です。重粒子線という放射線と合わせて「粒子線」と呼ばれます。

原子陽子線は水素から作られます。水素原子から電子を取り去ると、1個の陽子が残ります。水素原子は、1個の電子と1個の陽子から成り立っているからです。
この水素原子の陽子を加速器で光速に近い速度まで加速し、磁石で曲げながらがんにぶつけるのが陽子線がん治療です。
ちなみに、もう一つ挙げた粒子線、重粒子線を使ったがん治療では一般に炭素の原子核が使われます。

重粒子線、陽子線、どちらもがんの治療に用いられますが、陽子線がん治療の方が歴史があります。
日本の陽子線がん治療は1979年にスタートし、現在の施設数は16(重粒子線がん治療が日本でスタートしたのは1993年)です。

日本では使い分けられていますが、アメリカでは粒子線治療と言えば陽子線がん治療を指す場合がほとんどです。

従来の放射線治療との違い

陽子線がん治療と従来の放射線治療の最も大きな違いは、放射線量のピークにあります。

従来の放射線治療で用いられているX線やガンマ線は体表付近で放射線量が大きくなり、その後徐々に弱まりながら身体を透過する性質を持っています。そのため、体の奥深くにあるがんには不向きでした。

体深くにあるがん一方、陽子線は、体の奥深くにあるがんに高い治療効果を発揮します。
その効果を生み出すのは、体内で放射線量が最大になって止まる、という陽子線の特徴です。この特徴はブラックピークと呼ばれます。

よりピンポイントにがんに狙いを定めることができるようになったため、従来の放射線治療以上に、がんに厳しく、患者さんの身体にやさしい治療ができるようになっています。

陽子線がん治療が向くがんとは

陽子線がん治療が適応となるのは、原則以下のがんです。
肝がん、前立腺がん、肺がん、食道がん、頭頚部がん、脳腫瘍、頭蓋底腫瘍、小児がん、骨軟部腫瘍など。

また、がんの種類にかかわらず、陽子線がん治療を受けるには、細かな条件もあります。

  • 他の臓器への転移がなく、病巣が狭い範囲に限られていること
  • 原則として、陽子線がん治療を受けようとしている部位に、以前、放射線治療を受けていないこと
  • 同じ姿勢で、30分間横になって動かないでいられること
  • がんの告知を受けていて、患者さん自身が陽子線がん治療を受ける意思を持っていること

上記の条件をクリアして初めて、陽子線がん治療が視野に入れられることになります。

陽子線がん治療の課題

1979年にスタートした陽子線がん治療は、今まで20,000人以上の患者さんが受けており、その数は年間3,000人ずつ増えています。
しかし、年間65万人が新たにがんと診断されている現状を考えると、とても主流の治療法とは言えません。陽子線がん治療を含めた粒子線治療は、装置やコストと言った難しい問題を抱えています。
陽子線がん治療の課題を見てみましょう。

  • 巨大な施設と装置が必要
  • 金銭的な負担
  • 扱える医師が少ない

巨大な施設と装置が必要

陽子線がん治療は重粒子線がん治療と言った粒子線がん治療には、巨大な施設と装置が必要とされます。設置には広い場所と莫大なコストがかかるのです。

重粒子線治療の施設に比べて、陽子線がん治療のそれの方がやや小型ですが、それでも設置できるのは、大学病院や地方自治体等に限られているのが現状です。

今後の普及のために、治療装置の小型化が期待されています。

金銭的な負担

健康保険陽子線がん治療の治療費は、治療だけで数百万円かかります。高額ですね。

問題なのは、陽子線がんが現在、先進医療である点です。先進医療に健康保険は適用されません。
つまり数百万円の医療費は全額個人負担なのです(小児がんの場合は保険適用です)。

現在は、民間の保険で先進医療も給付の対象としているものがありますが、これらに加入していない場合は、治療費が大きな負担になります。

扱える医師が少ない

施設数が少ないということは、陽子線がん治療に携わったことのある医師も少ないということです。
正確性を要する放射線治療において、経験不足の医師は、残念ながら役に立ちません。

とは言え、陽子線がん治療装置を正確に扱える医師がいない状態では施設を増やすことも、装置の数が少ない状態で医師を育成することもできません。

この医師不足は今後の陽子線がん治療の普及にとって大きな課題です。

まとめ

陽子線がん治療は、患者さんにやさしく、治療効果の高い、期待の治療法です。
にもかかわらず、残念なことに、普及にはまだまだ時間がかかりそうです。

ハード面もソフト面も、色々な課題を乗り越えて、少しでも普及することを願っています。
いずれは保険適用でより気軽に陽子線がん治療を受けられる世の中になればいいですね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。