がん治療

がん温熱療法は副作用が少ない~ハイパーサーミアとオンコサーミア

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がんの治療では近年、副作用が少ない治療法として「温熱療法」が注目されています。

がん細胞は、通常の正常な細胞に比べて熱に弱いという特徴があります。
温熱療法はがん細胞が熱に弱い特徴を利用して、がん細胞が死滅する42.5度付近まで加熱して死滅させる治療法です。

がん 温熱療法 オンコサーミア

温熱療法は古代ギリシャや古代インドでも利用されていた

温熱療法の歴史は古く、古代ギリシャのヒポクラテスの時代にはすでに温熱療法がありました。
紀元前5世紀頃には、すでに人類は温熱療法を利用していた歴史があるのです。

ヒポクラテスは、熱を作ることができれば、人間の体に出来る腫瘍やあらゆる病気を治すことができると言っており、温熱療法の重要性を説いていました。

古代インドに残る大長編叙事詩「ラーマーヤナ」にも「皮膚にできた腫瘍を熱した鉄で焼く」という記述があるように、古代より温熱・加熱による治療は医学の中でも重要な位置を占めており、難病の治癒への可能性を見出していました。

がんが自然治癒する可能性

がんは不治の病と恐れられていましたが、なかには自然治癒(自然退縮)した人も多くはありませんがいます。
患者さん6~10万人に1人程度の確率で、がんが自然と退縮してしまい、結果的に治癒したことになっているのです。

1900年頃、感染症が流行し生死をさまようほどの高熱が出た後、がん患者さんのがんが完治した例がいくつかありました。
これは感染症で高熱が出て、がん細胞を選択的に死滅させることができたからと考えられています。

がん 温熱療法 高熱

そこから強制的に感染症にかからせて発熱させるという乱暴な実験なども行われました。
幾度も研究を重ねられ、1974年、アメリカのジョンズホプキンス大学医学研究所が「感染症による発熱が、がんの自然治癒の一因につながる」と発表しました。

偶然による発熱や、感染症に感染することでの発熱ではなく、実際にがんに対して効果的な加温治療を行うまで研究が進み、1984年にがんの温熱治療器が「ハイパーサーミア」の開発につながっています。

ハイパーサーミアとは

がんの研究が進むにつれて、体内の正常細胞は44度まで上昇に耐えられるのに対し、がん細胞は42.5度付近で膨張してネクローシス(壊死)を起こすことがわかりました。
そこで、この理論に基づいて、がんの温熱治療器であるハイパーサーミアが開発されました。

ハイパーサーミアは、がん細胞を42 ~43度に加温することで、がんのある場所を身体の上下から2枚の電極板ではさみ、8メガヘルツの電磁波(ラジオ波)を流す治療法です。

8メガヘルツの電磁波は、がん細胞の中の水分子を急速に動かし、その摩擦運動によって自己的に発熱が起こるため、がん細胞を破壊します。

がん 温熱療法 ハイパーサーミア

しかし、高周波の電磁波を発生させるためには、1.500ワットの高出力が必要になり、高出力になればなるほど患者さんの身体に接する電極板の表面温度は上昇するため、患者さんに熱傷のリスクがあるのです。

また、ハイパーサーミアは、がん細胞を識別することができないので、がん細胞だけを狙って加温するのではなく、周辺組織や細胞まで加温してしまう欠点もありました。
正常な細胞は、加温されると熱を逃そうと放熱してしまうので、がん細胞を加熱し続けることは難しくなるというデメリットもありました。

その欠点やデメリットを克服したのが、「オンコサーミア」です。

全く新しい「オンコサーミア」という温熱療法の開発

ハイパーサーミアのメリットと温熱リスクなど考慮しながら、全く異なるアプローチで登場したがんの温熱療法が「オンコサーミア」です。

オンコサーミアは、がん細胞だけに熱を送り込むことが出来るため、がん細胞のアポトーシス(自殺)のメカニズムを促進させることができる温熱治療法です。

オンコサーミアは、ハイパーサーミアのようにがん細胞の死滅(ネクローシス)を目指すのではなく、がん細胞を自死(アポトーシス)に導くための治療法です。

オンコサーミアとハイパーサーミアは同じ温熱療法ですが、オンコサーミアの最大出力は、ハイパーサーミアのわずか10分の1.150ワットなので、熱傷のリスクもぐっと低くなります。

高齢者にも向いているオンコサーミア

オンコサーミアは副作用も少ないため、高齢者にも適した治療法です。

また、身体が持つ本来の免疫機能を活性化させる役割もあるので、化学療法、放射線療法、さらにがん免疫療法とも相性が良いというメリットがあります。

高齢者は、体力とがんの状態によっては、手術での対応が出来ない場合もあります。しかし、抗がん剤の治療法はきつく、つらい思いをすることになります。
そこで、放射線治療や免疫療法を勧められることが多いのですが、放射線治療と温熱療法を併用することによって、化学療法や放射線治療、がん免疫療法の治療効果を高めることも期待されます。

がん 温熱療法 オンコサーミア

もちろん若い人でも、温熱療法を行って抗がん剤の使用量を減らして、副作用の少ない治療を行うことも可能です。

つらくないがんの治療ができることは、がん患者さんの大きな希望になります。
温熱療法の治療法は日々研究されており、これからも温熱療法の機器の進化と活用法の発展が期待されます。

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