用語集

がん治療用語集:温熱療法・オンコサーミア・ハイパーサーミア

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温熱療法は、副作用が少ないがんの治療法の1つです。

がん細胞は、通常の正常細胞に比べて熱に弱いという特徴があり、42.5度付近で死滅してしまいます。

1980年代には、がん細胞の研究で「正常細胞は体温の上昇時に44度まで耐えられるけれども、がん細胞は42.5度付近で死滅する」ということがわかっていました。
がん細胞は加温されることによって、42,5度付近まで達すると膨張しネクローシス(壊死)してしまうのです。

温熱療法は、この「がん細胞が熱に弱い」という特徴を利用して、がん細胞に熱を加えることでがん治療をしていく方法です。

がん治療 温熱療法 オンコサーミア ハイパーサーミア

温熱療法の歴史

温熱療法はすでに、古代ギリシャの医学の父ヒポクラテスの時代に実践されていたという記録があります。
ヒポクラテスは、人工的に熱を作ることが可能になれば、人間の病や体にできる腫瘍を治すことができるという説を唱えており、紀元前5世紀頃には、すでに温熱療法を活用していたのです。

また、古代インドに残る大長編叙事詩「ラーマーヤナ」においても「皮膚にできた腫瘍を熱した鉄で焼く」という外科手術的な行為をしていた文献があります。
人類は古代より熱による治療を実践しており、熱は病気治療の鍵になると研究され続けてきました。

オンコサーミア

がんの温熱治療法の1つである「オンコサーミア」は、がん細胞にだけ加熱することで、がん細胞をアポトーシス(自殺)に追い込んでいく治療法です。

オンコサーミアは、がん細胞の細胞膜を感知してがん細胞にのみ加熱し続けるため、細胞膜を境界線にした時にがん細胞の外側と内側では温度差が発生します。
この温度差によって、がん細胞はアポトーシス(自殺)に追い込まれていきます。

温熱療法 細胞 アポトーシス

オンコサーミアは「○度まで加熱しよう」という目標温度設定があるわけではなく、がん細胞の細胞膜の外側と内側の温度差からがん細胞を死滅させることが目的です。

細胞膜の層はわずか5nm(1nmは、1mm /1000)と非常に薄く、オンコサーミアによって作られるがん細胞の細胞膜の外側と内側の温度差が0.001度生じれば、がん細胞を死滅させるメカニズムを引き起こすことが可能です。

オンコサーミアの最大出力は150w、がん細胞の細胞膜の外側と内側の温度差を0.001度起こすことが目的ですので、大きな出力は必要ありません。
そのため、患者さんの熱傷リスクも低くて済むのです。

オンコサーミアとブドウ糖

オンコサーミアは、13.56MHzの周波数のラジオ波だけをがん細胞に照射して熱を送り込み、がん細胞の細胞膜の外側と内側に温度差を作るシステムです。

では、オンコサーミアはどのようにしてがん細胞に熱を送るのかというと、ブドウ糖がキーになります。

がん細胞は、エネルギー源としてブドウ糖をたくさん取り込むという特徴があるため、ブドウ糖が多く集まっているところを狙って加温していきます。

オンコサーミアから照射されるラジオ波は、ブドウ糖が集まるがん細胞の細胞膜だけを選んで加温するため、オンコサーミアの治療中、患者さんの身体が多少動いても、自動的に調整しながらがん細胞の位置を追跡していくことができます。

オンコサーミアには、がん細胞を識別する優れた作用(腫瘍選択性)があることと、低出力ゆえに患者さんの熱傷リスクが少ないことから、今後のがん温熱療法の中心的存在になっていくでしょう。

ハイパーサーミア

がんの温熱療法の1つである「ハイパーサーミア」も、がん細胞が42.5度付近で死滅するシステムを利用した温熱治療法です。

ハイパーサーミアは、患者さんが寝た状態で、2枚の電極板で体の上下からがん細胞がある場所を挟んで、8MHzの電磁波を電極間に流すという治療法です。

ハイパーサーミアの8MHzの電磁波を起こすには、1500wの高出力が必要になります。
この8MHzの電磁波は、がん細胞の中の水分子を急速に動かしていくため、摩擦運動によって内部で自動的に発熱が起こります。

がん治療 血管正常な血管は加熱されることで血管が拡張するため熱を逃すことが可能ですが、がん細胞の中に通っている血管は熱によって拡張しません。
そのため、がん細胞は内部で発熱が起きても、熱を逃がすことができなくなるのです。

すると、がん細胞は正常細胞に比べると、1~2度温度が上昇します。
そしてどんどんがん細胞の内部には熱がこもり高温になってしまい、がん細胞を破壊してしまうのです。

ハイパーサーミアでは、正常な細胞を破壊することなく、がん細胞だけに発熱が生じて破壊させることが可能です。

ハイパーサーミアの欠点

ハイパーサーミアの欠点は、正常細胞とがん細胞を識別する「腫瘍選択性」にかけてしまうことです。
そのため、電極板で加温する際にがん細胞だけでなく、周囲の正常細胞まで加温してしまうということがあります。

正常な細胞が加温されることで、身体は正常細胞への血流を増やしていくので、どんどん熱を逃がそうという作用が起きます。
いくら外部からハイパーサーミアで加温しても、正常細胞の熱を逃す作用から温度が下がるため、加温効果も減少してしまうのです。

さらに、がんの周辺の正常細胞の温度が高まると、血流が活性化してしまい、がん細胞へ余分な栄養が供給されてしまうこともあり、がん細胞が分散したり、不用意に転移したりするというリスクも高くなってしまいます。

分散したがん細胞は、活性化した血流に乗って移動するため、転移の速度も早まる可能性があります。

熱傷のリスクもある

ハイパーサーミアでは、患者さんの身体の上下から2枚の電極板を当てて8MHzの電磁波を流すため、1500wもの高出力を使用することになります。

すると、接する電極板の表面温度も上がってしまうことから、患者さんに熱傷のリスクが生じてしまうのです。

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