放射線治療

がん放射線治療の最新機器サイバーナイフが誕生した経緯とは?

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まるで切り取るようにがんを消滅させることを可能にした放射線治療装置、サイバーナイフ。サイバーナイフが生まれる以前、放射線治療の主役はガンマナイフという定位放射線治療装置でした。
今回は、サイバーナイフの前進とも言えるガンマナイフに焦点を当ててお話をします。

脳の放射線治療

定位放射線治療とは

サイバーナイフとガンマナイフを使った治療はともに「定位放射線治療」です。
定位放射線治療は英語ではStereotactic Irradiationと呼ばれ、その頭文字をとってSTIとも表記されます。身体の周囲の様々な方向から放射線を照射し、がんをピンポイントで照射する治療法です。
照射は三次元的で、がんの形に添って正確に行われます。不必要な部分に放射線が当たりにくいので、正常な組織に影響の少ない放射線治療法とされています。

他の放射線治療と同じく、照射による痛みはなく、おおむね術後2カ月で効果が見えてきます。副作用の心配はそれほどありません。

定位放射線治療には、一度の照射で治療する定位手術的放射線治療と複数回に分けて照射する定位分割放射線治療があり、がんの状態や部位に応じて使い分けられています。

世界初の定位放射線治療装置ガンマナイフ

ガンマナイフは、世界で最初に定位放射線治療を実現した装置です。スウェーデン・カロリンスカ大学脳神経外科のラース・レクセル教授によって原理が考案され、同大学にガンマナイフが設置されたのが1968年でした。
ガンマ線を使う放射線治療でありながら、周囲の正常組織と放射線の照射野がナイフで切り取ったかのようにシャープである――、これがガンマナイフという呼び名の由来と言われています。

ガンマナイフは脳腫瘍治療のために開発された装置です。

あれ? がんの治療目的じゃなかったの? と思われる方もいるかもしれませんね。

脳のMRI断面図脳にできた腫瘍は、悪性であっても良性であっても「脳腫瘍」と呼ばれます。
悪性であればいわゆる「がん」に分類される可能性ももちろんあるわけですが、脳にできた腫瘍は悪性良性を問わず生命に重大なリスクを及ぼすため、あえて「脳がん」と区別することはありません。

ガンマナイフは、特に転移性脳腫瘍に大きな威力を発揮します。脳腫瘍以外では、三叉神経痛などの神経の病気や脳静脈奇形という脳血管障害の治療にも有効な治療法とされています。

ガンマナイフが抱える課題

ガンマナイフの治療装置は、金属製のヘルメットのような形をしています。
ヘルメットの外側にはガンマ線を放出する201個のコバルト線源が配置されており、それに合わせてヘルメットには201個の穴があけられています。

治療ではまず、レクセルフレームと呼ばれる金属製の枠のようなものを、4本のねじで頭蓋骨に固定します。その状態でCTなどの画像検査を行い、放射線を照射する位置決めを行います。
先に説明したヘルメット状の治療装置をレクセルフレームにセットしてガンマ線を照射すれば、治療装置の穴を通過して腫瘍に放射線が届く仕組みです。

一見ピンポイントに放射線が患部に届いてよさそう、と思われるかもしれませんが、実はガンマナイフのこの仕組みには弱点が一つあります。
それは、ガンマナイフのビームが穴を通過するため、ビームの形状は円形にしかできないということです。

ビームの形状不規則な形のがんに対しては、円をいくつもつなぎ合わせて対処することになります。正常組織への線量が増えすぎれば副作用につながりますし、逆に線量を抑えすぎると再発を招くリスクがあります。

克服すべき課題はありましたが、それでもガンマナイフ(定位放射線治療)がピンポイント照射の効果を実証したことは間違いありません。

ガンマナイフからサイバーナイフへ

頭部以外の全身にも、ガンマナイフと同じような効果を得ることはできないだろうか……。1985年ごろから欧米ではこうした思いが沸き上がりました。
そんななか誕生したのがサイバーナイフです。
サイバーナイフは、ガンマナイフの定位放射線の原理を発展的に受け継いで開発された装置です。スタンフォード大学の脳神経外科医であるジョン・アドラー教授によって、1994年に開発されました。

1号機が設置されたスタンフォード大学では次々に優れた治療成績が立証されました。治療成果はもちろん、特筆すべきは患者さんへの負担の小ささで、これはサイバーナイフの大きな特徴です。

サイバーナイフ

放射線の精度が上がったのはもちろん、固定の苦痛も軽減されています。

例えば、ガンマナイフでは頭部を固定するためにレクセルフレームを頭蓋骨に固定していましたが、サイバーナイフの固定具は薄いメッシュ性のプラスチックでできたマスクを使います。
フレームの固定は痛みを伴いますし、時間もかかります。身動きが取れず、圧迫感があり、患者さんへの負担は決して小さくありませんでした。
サイバーナイフのマスクは伸びる素材でできているため、ガンマナイフと比べて、その負担は比較にならないほど小さくなっています。

さらに言えば、体幹部のがん(肺がん、肝臓がん、前立腺がん、乳がんなど)では、このマスクも不要です。患者さんのボディにフィットする簡単な補助器具を使って身体を固定するだけです。
治療も患者さんはなるべく動かないように注意しながら寝ているだけ。
ロボットアームの先につけられた装置からプログラム通りに、自動的に放射線が照射されていき、あっという間に治療が終わるのです。

まとめ

ガンマナイフは利益率の高さから多くの病院に導入された経緯があります(現在、ガンマナイフの診療報酬は引き下げられ、利益率も以前ほど高くはありません)。
利益のため、という理由であったとしても、結果として放射線治療が全国に広がるきっかけになったことは間違いありません。
最近は、サイバーナイフへの切り替えが盛んになっています。お近くの病院にも導入しているところがあるかもしれません。
より患者さんへの負担が少なく、より適応範囲が広い――。そんなサイバーナイフがますます全国に広がり、一人でも多くの患者さんが気軽に治療を受けられるようになればと心から願っています。

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