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がん温熱療法どちらが効果的? ハイパーサーミアとオンコサーミア比較

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ハイパーサーミアとは?

最新がん治療、温熱療法とは?

がん免疫療法と並んで、近年注目を浴びているのが、がん組織を加温してがん細胞を死滅させる「温熱療法」という治療法です。

がん細胞が正常細胞に比べ熱に弱いというメカニズムを利用して、がん細胞を加温することで治癒を目指す治療法です。

1980年代のがん細胞の研究で、正常細胞は44度まで体温の上昇に耐えられるのに対し、がん細胞は42.5度付近で膨張してネクローシス(壊死)を起こすことが分かってきました。

その研究に基づいて開発されたのが「ハイパーサーミア」です。

ハイパーサーミアの仕組み

ハイパーサーミアは、がん細胞を42~43度に加温するために、患者の体を寝かした状態で、身体の上下からがんのある場所を2枚の電極板ではさみ、8メガヘルツの電磁波を電極間に流します。
その高周波の電磁波を発生させるためには1500ワットの高出力が必要です。

ハイパーサーミアの基本的な仕組みは電子レンジと同じこの8メガヘルツの電磁波でがん細胞の中の水分子を急速に動かし、その摩擦運動によって自己的に発熱が起こる仕組みです。
キッチンにある電子レンジと基本的に同じ仕組みですね。

正常な血管とは異なり、がん細胞などの中を通る血管は熱によって拡張しないので熱を逃がすことができません。
そのため、がん細胞は正常細胞に比べて1度から2度ほど高くなります。
結果、どんどん熱がこもって高温になり、この熱ががん細胞を破壊します。

このようにして、ハイパーサーミアは正常な細胞を破壊することなく、がん細胞だけを選択的に破壊させることができます。

ハイパーサーミアはがん温熱治療に大きな貢献はしたと思います。しかし、大きな欠点があります。

ハイパーサーミアの欠点とは?

ハイパーサーミアの欠点は、周囲の正常な細胞まで加温してしまうそのメカニズムです。
ハイパーサーミアは厳密にがん細胞だけを加熱しているわけではありません。周囲の正常な細胞も加温しています。

正常な細胞が加温されると、身体は正常細胞への血流を増やし、熱をどんどん逃がそうとします。
すると、いくらハイパーサーミアで加温しても、がん細胞と周囲の正常細胞の温度差が失われ、加温効果が損なわれることになります。

加温でがんが転移するリスク?

加温効果が損なわれるばかりか、がんの周辺組織の温度が高まれば、血流の活性化でがんへ余分な栄養が供給され、がんの分散や転移のリスクが高くなります。
増えたがん細胞は、活性化した血流に乗って移動するからです。

また、ハイパーサーミアは患者さんの身体に電極板を密着する必要がありますが、1500ワットの高出力を使用するため、接する電極板の表面温度がどうしても上がってしまい、患者さんに熱傷のリスクが生じることも欠点です。

オンコサーミアとは?

上記のハイパーサーミアの欠点は、医学用語で言うと「腫瘍選択性」に欠けるということです。

正常細胞とがん細胞を識別する。これが腫瘍選択性です。

そこで全く異なるアプローチで開発されたがんの温熱療法が「オンコサーミア」です。

この“全く異なるアプローチ”というのがポイントです。

オンコサーミアはがん細胞「だけ」に熱を送り込むことで、がん細胞のアポトーシス(自殺)のメカニズムを促進させる温熱治療法です。

ハイパーサーミアとオンコサーミアの違いは?ハイパーサーミアのように、がん細胞の死滅(ネクローシス)を目指すのではなく、がん細胞を自死(アポトーシス)に導く。ここが、ハイパーサーミアとオンコサーミアの最大の違いです。

ネクローシスとアポトーシスとは、私たち人間のような多細胞生物で、個別の細胞が死ぬメカニズムの種類です。

ネクローシスとアポトーシス

がん細胞に限らず、細胞には主に2種類の死があると言われています。
プログラムされていない死「ネクローシス」と、プログラムされた死「アポトーシス」です。

プログラムされていない細胞死ネクローシス

プログラムされていない死ネクローシスとは、外的要因によって病気になった細胞の死に方です。
例えば細胞が高熱により傷を受けた、有毒成分が細胞内に入った、必要な栄養が届かないなどの外的環境要因により誘導されます

ネクローシスを起こした細胞は、細胞内の成分を周りにまき散らしながら壮絶に死んでいきます。
まき散らした細胞内成分が原因となって、周囲に炎症が起こってしまうこともあります。

プログラムされた細胞死アポトーシス

対してプログラムされた死であるアポトーシスは、周囲環境の変化により、その細胞が存在しない方が身体全体のために良い状況になったとき、細胞が自らを死なせてしまう死に方です。言ってみれば細胞の自殺ですね。

自殺と聞くと物騒な話ですが、もともとアポトーシスは私達の周りにもよく見られる現象です。

美しい紅葉も実はアポトーシスの贈り物

例えば日本では秋になると、モミジやカエデなどの葉が赤や黄色に紅葉して、やがて枝から落ちてハラハラと落ちていきます。
これは、生物学的には「アポトーシス」と呼ばれます。

季節が変わり、外気温が下がり、モミジやカエデといった樹木は冬眠状態に入ろうとします。
冬眠に備えて体内の水分を節約しようとする樹木にとって、蒸散作用によって水分を外部に放出してしまう葉は不要な存在になるわけです。

だから葉はそうした状況の変化を感じ取って、アポトーシスを起こして死んで落葉していくのです。

紅葉もアポトーシス

他にも、オタマジャクシがカエルへと成長して、陸上へ上がる準備を始めるとき、シッポの細胞はアポトーシスを起こして徐々になくなっていきます。

アポトーシスを起こした細胞は 自ら縮んでいって死に、体内のマクロファージなどに取り込まれて密やかに処理されます。周囲に炎症を起こすこともありません。

特定の状況になると自殺するようにプログラムされたこのアポトーシスは、私たちの身体の中でも、発生過程で不要になった余分な細胞などで日々起こっています。
アポトーシスのお陰で、私たちの体はいつもフレッシュな細胞で構成されて機能できているわけです。

そしてアポトーシスはがん細胞でも起こります。

がん細胞にネクローシスを起こさせることが目的のハイパーサーミアに対し、がん細胞にアポトーシスを誘発させる方法の研究が進んでいって開発されたのが、オンコサーミアです。

オンコサーミアはがん細胞内外に温度差をつくる

オンコサーミアはがん細胞だけに熱を送り込みます。もっと厳密に言えば、がん細胞の細胞膜を感知し、がん細胞にのみ熱を送り続けます。

ですから、細胞膜を境にして、がん細胞の外側と内側で温度差が生じます。この温度差ががん細胞のアポトーシスを誘導していくのです。

ハイパーサーミアは、がん細胞を42 ~43度に加温して、いわば焼き殺すことが目的でしたが、オンコサーミアは温度の絶対数値が目標ではなく、がん細胞の細胞膜の内と外で温度差をつくってアポトーシスを促進することが目的なのです。

温度差0.001度の妙

オンコサーミアががん細胞の内外につくるその温度差とはどれくらいでしょうか?
実は、わずか1000分の1度(0.001度)です。

たった0.001度と驚かれたかもしれませんね。でもそれで十分なんです。
細胞膜の層はわずか5ナノメートル(1ナノメートルは、1000分の1ミリ)と非常に薄いものです。
1つの細胞を私たちの等身大にスケールアップして考えると、細胞内外の温度差もそのスケールに合わせて増幅します。

そうすると、0.001度の温度差は生体のレベルで考えると、1mあたり20万度もの非常に大きな差になります。
1m離れた2点の温度差が20万度。想像を絶する状態です。

この温度差が、がん細胞の細胞膜を通して内部に熱を送り込む力となり、がん細胞にアポトーシスのメカニズムを引き起こします。

微小な温度差を起こすことが目的ですから、オンコサーミアの最大出力は、ハイパーサーミアのわずか10分の1の150ワットで済みます。
もちろん治療を受ける患者の熱傷のリスクはぐっと低くなります。

温熱療法で患者のリスクは下がります

では、オンコサーミアはどのように、がん細胞の細胞膜だけをめがけて熱を送り込みのでしょうか?

この温度差をつくる働きをするのが、オンコサーミアが送る13.56メガヘルツの周波数です。

この周波数はがん細胞の細胞膜にだけ働きかけ、オンコサーミアにがんを識別する腫瘍選択性をもたらします。

なぜ13.56メガヘルツなのでしょうか? ここにオンコサーミアの特許技術があります。

ポイントはブドウ糖です。

がん細胞はブドウ糖で見分けろ!

がん細胞は、エネルギー源としてブドウ糖をたくさん取り込むことが研究で明らかになってきました。

オンコサーミアの13.56メガヘルツという周波数は、ブドウ糖がたくさん集まっているところだけを加温するのです。

13.56メガヘルツに限定したラジオ波だけを照射することで、がん細胞の細胞膜だけに熱を送り込んで温度差をつくり、がん細胞にアポトーシスを誘発できるようになったのです。

がん細胞の細胞膜だけを選んでラジオ波が集まるので、治療中に多少身体が動いても、自動的にがん細胞の位置を追跡してくれます。

まとめ

がんの温熱療法に使われるハイパーサーミアとオンコサーミアを比較してみました。
どちらも温熱の意味を持つ言葉サーミアがつくので、同じような機器と思われていた方も多いかもしれませんね。

しかし実はがん細胞を焼き殺すネクローシスを狙うハイパーサーミアと、がん細胞が自殺するアポトーシスのメカニズムを誘発するオンコサーミアは、全くコンセプトが異なる温熱療法機器です。

オンコサーミアはその優れた腫瘍選択性(がんを識別する高い作用)と低出力により、がん温熱療法の柱になっていくことが期待されています。

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